- 「ISMSって取っても意味がないって、本当なのかな…?」
- 「認証のための書類づくりに追われて、現場は疲弊するだけじゃ…?」
- 「せっかく運用に関わってきたのに、このスキルって評価されるの…?」
こんなモヤモヤを抱えるセキュリティ担当者は少なくありません。
先に結論をお伝えします。
ISMSという制度そのものが無意味なのではなく、形骸化した瞬間に意味を失うだけです。
むしろ、ISMSに意味を持たせられる人材こそ、市場では高く評価されます。
この記事でわかることは次のとおりです。
読み終えるころには、自分のISMS経験をキャリアの武器に変える道筋が見えるはずです。
なお、このメディアはセキュリティ人材のフリーランス(案件参画)を支援するスプラッシュエンジニアリングが運営しています。
せっかくISMSの運用を手伝ってきたのに、意味ないって言われると悲しいでしゅ…
心配するな。その経験の価値、この記事で証明してやる。
※記事の内容をサクッと確認したい方は、以下のスライドでご確認いただけます。
目次
【結論】ISMSは本当に意味がないのか
「意味がない」と言われるISMSですが、制度そのものに問題があるわけではありません。
問題は、認証を取ること自体がゴールになり、運用が止まって形だけが残った状態です。
リスクを自社の言葉で評価し直す作業をやめ、認証取得のための書類だけが更新され続ける。
ISMSが意味を失うのは、こういうときです。
逆にPDCAを実務として回し続けられれば、ISMSは組織の防御力を底上げする仕組みになります。
この先の議論は、次の3つの軸で捉えると理解が進みます。
- 無意味なのは制度ではなく、形骸化という運用の状態
- 意味を持たせられるかどうかは、運用する人材次第
- だからこそISO27001を回せる人材の市場価値が上がる
「ISMSは意味があるか」という問いは、「誰が運用するか」という問いに置き換えるべきです。
意味がないんじゃない、意味を持たせられていないだけだ。
そもそもISMS(ISO27001)とは何か
「意味がない」という声の多くは、古いISMS像に基づいています。
まずは制度の定義と最新の姿を、正確に押さえましょう。
ISMSとISO/IEC 27001・JIS Q 27001の関係
用語の混同が、ISMSへの誤解を生む一因になっています。
三者の関係を整理すると、理解がすっきりします。
ISMSは認証そのものではなく、情報セキュリティを継続的に運用する「仕組み」を指します。
ISO/IEC 27001は、その仕組みが満たすべき要求事項を定めた国際規格です。
JIS Q 27001は、その国際規格を日本語化した国内規格という位置づけになります。
それぞれの位置づけを並べてみます。
- ISMS: 情報セキュリティを回し続ける仕組み(マネジメントシステム)
- ISO/IEC 27001: ISMSの要求事項を定めた国際規格
- JIS Q 27001: ISO/IEC 27001に対応するJIS規格(国内版)
押さえておきたいのは、認証を取ること(第三者認証)と、ISMSを運用することは別物だという点です(出典: ISMS-AC・ISMSとは)。
この違いが、後半の「形骸化」の話につながります。
2022年改訂で何が変わったか(移行期間はすでに終了)
ISMSは時代遅れだ、という見方は最新版を知らない誤解です。
ISO/IEC 27001は2022年に改訂され、2024年2月に追補(Amd 1:2024)が発行され、附属書Aの管理策が旧版の114から93へ再編されました。
管理策は組織的・人的・物理的・技術的という4つのテーマに整理され、新設された管理策は11あります。
新設分には脅威インテリジェンスや、クラウドサービス利用時の情報セキュリティなどが含まれます(出典: IRCA・27001の改訂点 / JIPDEC・ISO/IEC 27001改訂)。
改訂で押さえるべき変化は、大きく3つです。
- 管理策を114から93へ再編し、4テーマに整理
- 脅威インテリジェンス・クラウドなど11の管理策を新設
- 旧版からの移行期限は2025年10月31日で、2026年8月時点で移行期間は終了済み(出典: ISMS-AC・2022年版への対応)
クラウドや脅威インテリジェンスが管理策に入った。
ここからも、規格が現場の変化に追随しているとわかります。
全部暗記する必要はない。自社に必要なものを選んで回す、それがISMSだ。
ISMSが意味がないと言われる4つの理由
「意味がない」という実感には、共通する構造があります。
その正体は、制度の欠陥ではなく形骸化のメカニズムです。
理由1 認証取得が目的化して形骸化する
ISMSが意味を失う最大のパターンは、認証を取ること自体がゴールになってしまうことです。
取得や更新審査を通すことだけが目的になると、PDCAのCheck(点検)とAct(改善)が動かなくなります。
規程は棚に並んだまま、現場の実態とかけ離れていきます。
審査の前だけ帳尻を合わせ、終わればまた放置。
そんなサイクルに陥りがちです。
典型的には、こんな順序で進みます。
- 取得後に運用の主担当が不在になり、更新審査だけが残る
- リスクアセスメントが毎年ほぼコピーで済まされる
- 是正処置が文書上の対応だけで完結する
こうなると、認証マークは持っていても中身が伴いません。
「意味がない」という実感につながります。
理由2 文書・記録づくりが現場の負担になり形だけになる
ISMSは規程や記録の整備を求めるため、運用の手間が大きくなりがちです。
本来はリスク低減のための文書が、いつのまにか審査で見せるための書類に変わってしまいます。
現場のエンジニアからすると、日々の業務に加えて記録づくりの負荷だけが積み上がる感覚になります。
その結果、実務のセキュリティ対策と文書の内容がずれていきます。
危ないのは、こんな兆候が出たときです。
- 記録が審査直前にまとめて作成される
- 台帳の更新が実際の資産変更に追いつかない
- 誰も読まない「文書のための文書」が増える
文書は実務を守るための道具です。
道具が目的になった瞬間に、ISMSは「形だけ」と呼ばれます。
理由3 認証があってもインシデントは防げないと感じる
「認証を取ったのに情報漏えいが起きた」という話は、意味がない論の典型的な根拠です。
ただ、ここには誤解があります。
ISMSはリスクをゼロにする仕組みではなく、リスクを管理する枠組みです。
どれだけ対策しても、リスクを完全に消すことはできません。
ISMSが実際に担うのは、リスクを管理し続けるプロセスです。
まず自社の情報資産とリスクを洗い出します。
そのうえでリスクに応じた管理策を選び、日々運用します。
インシデントを検知したら、対応と再発防止につなげていきます。
認証の有無と、個別のインシデントが起きるかどうかは直結しません。
大切なのは、事故が起きたときに被害を最小化し、素早く立て直せる体制があるかどうかです。
理由4 経営層がチェックリスト対応としか捉えていない
形骸化の根っこには、経営層の関与不足があります。
ISO27001は、トップマネジメントのコミットメントを規格の要求事項として定めています。
それでも経営が「取得すればよい」「チェックリストを埋めればよい」と捉えると、運用は現場任せになります。
経営の関与が薄いと、現場はこうなります。
- セキュリティ投資の判断が後回しになる
- リスクの受容や対応を決める責任者が曖昧になる
- 現場が権限もリソースもないまま運用を丸投げされる
形骸化は、実質的に運用できる人材が組織にいない状態と表裏一体です。
この視点が、後半で述べる評価される人材の話につながります。
聞いてると、ISMSってダメダメに思えてきたでしゅ…
早合点するな。これは制度の欠陥じゃない、運用の失敗パターンだ。
それでもISMS認証取得企業が増え続ける理由
意味がないと言われながらも、ISMSの認証登録数は増え続けています。
その背景には、企業にとっての合理的な理由があります。
取得企業数の推移が示す市場の実態
データを見ると、ISMSへの需要は衰えていません。
ISMS-ACによると、認証登録数は2024年12月に8,000件を超えました。
同センターの発表では、2022年9月以降の約2年3か月で1,000件ほど増加しています(出典: ISMS-AC・ISMS認証登録数8,000件突破のお知らせ)。
この増加が示しているのは、こういうことです。
- 認証を取得・維持する組織が一貫して増えている
- それだけISMSの運用・改善を担う仕事が発生している
- 人材需要も同じペースで続いていく
登録数が増えるほど、運用を回せる人材の不足は深刻になります。
「意味がない」という声とは裏腹に、市場はISMS人材を求め続けています。
取引条件・入札要件として求められる実利
企業がISMSを取得する現実的な理由のひとつが、取引条件です。
取引先や官公庁の入札では、ISMS認証が参加や契約の前提条件になることがあります。
取引先を含めたサプライチェーン全体で、セキュリティ水準を担保する必要があるためです。
金融業界では、FISC(金融情報システムセンター)の安全対策基準が業界標準として参照されることもあります(出典: FISC・安全対策基準第14版)。
実際にISMSが効くのは、こんな場面です。
- 大手企業との新規取引で認証取得が条件になる
- 官公庁入札の参加資格として求められる
- サプライチェーン上の委託先選定で加点される
登録数の推移が示すとおり、ISMSは取引の前提条件として定着しつつあります。
現に、ISO/IEC 27001に基づくセキュリティ体制強化を担う案件も動いています。
インシデント時の説明責任・体制の証明になる
ISMSは、有事の説明材料としても機能します。
情報漏えいやシステム障害が起きたとき、管理体制を整備・運用していた事実を対外的に示せます。
顧客や監督官庁への説明責任を果たすうえで、第三者認証は客観的な裏づけになります。
同じ場面でも、認証の有無で対応の説得力は変わります。
| 場面 | ISMS認証あり | 認証なし |
|---|
| インシデント発生時 | 管理策の運用状況を記録で提示できる | 対応の裏づけを都度用意する必要がある |
| 監査・取引先の点検 | 一貫した記録で対応できる | 資料が属人的になり場当たり的になりやすい |
| 再発防止 | プロセスを制度として説明できる | 個別対応の説明にとどまりやすい |
ただし、これも運用の実態が伴って初めて意味を持ちます。
書類だけ整えても、いざというときに機能しなければ説明材料にはなりません。
実質を伴わせる人材がいてこそ、認証は守りの武器になります。
取引でも入札でも求められるからだ。企業にとっては死活問題だな。
ISMSを意味あるものにできる人材が市場で評価される
ISMSを実質的に回せる人材は、いま強く求められています。
ここからは、自分のキャリアに引きつけて考えていきましょう。
形骸化を防ぐのは運用を回せる人だという事実
理由4で触れたとおり、形骸化の原因は人材不足にあります。
裏を返せば、リスクを自社の文脈で評価し、改善まで回せる人材がいれば、ISMSは形骸化しません。
規程を書けるだけでなく、現場の実態に合わせてPDCAを実務として動かせる力が問われます。
この「回せる力」は、書類を作る作業とはまったく別のスキルです。
こうした人材は、自社のリスクを具体的な業務に落として評価できます。
管理策を、現場が実行できる形に翻訳する力もあります。
監査で受けた指摘さえ、改善のきっかけに変えられます。
そして、このような人材は数が足りていません。
だからこそ、ISMS運用の経験は、それ自体が市場で希少な価値になります。
ISMSを意味のある仕組みとして機能させた経験は、いまのセキュリティ市場で最も引き合いが多いスキルだと実感しています。
市場で評価されるISMS関連スキル
評価されるスキルを具体的に押さえておくと、学習やアピールの方向が定まります。
ISMS運用の経験は、いくつかの専門領域と結びつけると市場価値が高まります。
2022年改訂でクラウドや脅威インテリジェンスが管理策に加わったため、この分野の需要はとくに伸びています。
評価されやすいのは、こうした領域のスキルです。
- リスクアセスメントの設計と実行
- 内部監査の計画と指摘のフォロー
- 規程整備と現場運用をつなぐ橋渡し
- クラウドセキュリティ(2022年新設の管理策とも整合)
- GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)の統合的な視点
資格も武器になります。
情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)やCISSPなどは知識の裏づけになりますが、評価されるのは資格そのものより、実務で運用を回せるかどうかです。
フリーランス・案件参画でISMSの経験を活かす
ISMS運用やGRCの経験は、フリーランス案件でも高く評価されます。
セキュリティガバナンスの強化やISMS施策の推進を担うPMO型の案件は、実際に動いています(ISO27001準拠のセキュリティ施策推進・アドバイザリ案件)。
気になるのは単価だと思います。
セキュリティプロ・フリーランスの公開案件(2026年8月時点の公開案件114件)を集計すると、月額単価の中央値は90万円、レンジは50万〜180万円でした。
なかでもISMSの知見が活きる職種は、単価が上振れします。
- PMO: 中央値100万円/月・上限130万円
- 要件定義: 中央値112.5万円/月・上限160万円
ISMSを回してきた経験は、こうした案件で通用する実力です。
まずは自分のスキルがどの単価帯で評価されるか、セキュリティプロ・フリーランスの公開案件で確かめてみてください。
案件への参画に興味があれば、無料登録から具体的な相談を始められます。
まとめ:ISMSの価値はあなたが決められる
ISMSに意味があるかどうかは、制度ではなく運用と人で決まります。
認証を取っただけで放置すれば形骸化し、「意味がない」と言われます。
一方で、リスクを自社の言葉で評価し、PDCAを実務として回せる人材がいれば、ISMSは組織を守る仕組みになります。
そして、その「回せる人材」は市場で足りていません。
ISMSやGRCの運用経験は、フリーランス案件でも通用する確かな武器です。
自分の経験を市場で試してみたい方は、セキュリティプロ・フリーランスで公開案件と単価を確認してみてください。
そういうことだ。意味を持たせるのは、お前のようなエンジニアだ。